海外レポート
韓国不動産業界事情と新技術開発動向
今年もついに最後の月になりましたが、来年の日本の景気は良くなるだろうと期待しな
がら何とか踏ん張っています。
今回は、先月28日に中国出張の途中久しぶりに韓国インチョンによって来ましたので、
韓国の現状をレポートする事にしました。
11月23日に北朝鮮が韓国延坪島に砲撃した事件の直後で、しかも韓国米国合同
軍事演習がその近くの黄海で28日から12月1日の間行われる事になっていたので、大
丈夫かなと思いながら行ったのですが、現地インチョンの様子は普段とまったく変わらない・・
当然かもしれませんが・・、韓国の人との話でも、軍事演習中は一番安全だとか、中国の
要人が今韓国に来ているから今日は何も起こらないとか、現時点で北朝鮮を潰しておい
たほうが良いし、時間が経てば核の脅威で手が出せなくなるなどの冗談も出てくる現状で、
そんな事より韓国経済がこの事件で益々冷え込んでこないかの方が心配で、なんとか来
年は景気が回復して欲しいと、日本と同じような事を言っていました。
訪問した28日は今年一番の冷え込みだとかで、日中でもマイナス3℃、夜には雪も降
ってきて今年の初雪が私たちを歓迎してくれましたが、韓国の景気はウオン安で輸出が好
調の影響で国内経済も回復してきているのかと思っていましたが、現実には日本より厳し
い現状のようで、経済指標等は若干上昇傾向のようですが、国内需要の落ち込みが激
しく特に不動産関連は、マンション建設は昨年も悪かったのですが、今年は昨年比で60
%まで落ち込んでいるそうで、しかもそのほとんどが今年前半に終わってしまっていて、後半
はゼロに近い状態が続いていて、建設会社を助けるために韓国政府は急遽韓国内水路
整備計画を前倒しして進めていて、土木関係で何とか建設関係の維持を図っているとの
事です。
この影響で、フローリング製造会社はどこも受注が激減しており、倒産の危機に直面し
ているところも多くあるようです。
そんな中、しぶとく建材関連において新商品や新技術を開発をしているメーカーもあり、
特に塗料関係ではセラミックをナノ化した物を水性塗料として、床板の基材(合板)の表
面に塗布して硬度を上げ、表面化粧単板にも同様に塗布して硬度を上げ、WPC並み
の物性を出す技術や、家電製品のR形状の表面鉄板に対する塗布技術として、インク
ジェットで塗布できる超低粘度の無溶剤UV塗料の開発に成功して実用段階に来ている
物などがあり、我々とも設備的な問題での協力を一緒に進めていく話が進行しています。
その他にもセメント関連や石膏ボード等から出るラドンの人体に対する悪影響が、社会
問題化しようとしている事を食い止める技術としての、木炭ボードの商品化が進められてい
たり、化粧単板を特殊技術で炭素かした商品や、仕様用途はまだ決まっていませんが木
質の1.5mmT~10mmT程度のものに低温溶融金属を含浸させる技術が確立されて
いたり、それらも大学と小さなベンチャー企業が共同で開発している現状は、日本とはかな
り違った印象を受けています。
これらの商品が世の中に受け入れられていくかどうかは、これからの多くの人達の協力が
必要だと思いますが、彼らも韓国国内の需要を当てにしていたのでは先行きが見えてこな
いとの判断から、輸出に力を入れて世界に向けて新技術を販売して行こうと考えているよ
うです。
以前レポート上でご紹介した事がある、床板用の高硬度表面材に関しても韓国内では
試験販売も行われており、木材化粧単板だけではなく印刷紙を使った物はある程度のR
形状にも対応できる事から、家具部材や階段造作材等への応用もしていこうとしている
ようです。
日本では、この業界においての新技術の開発が現実に行われているかどうかはわかりま
せんが、大量に販売できる商品以外のものに関する開発は置き去りにされがちなように感
じていますが、韓国のように内需が大きくないところは海外に向けての視野で開発が行わ
れており、中国では内需が大きい事を背景に少量の特異な物でも商売に結び付けられる
のでしょうが、日本では考えられない物の開発がどんどん進められている現状を私たちはそ
れらの技術開発に関する情報をいかに早くキャッチして、いかに我々もその中に組み込まれ
る方向を見つけ出していくかが重要な事としてとらえています。
2010年12月10日
車田 修