中国レポート
韓国フローリング業界事情
今回は中国から外れて、3月初旬に一年半ぶりに訪問した韓国の現状とフローリン
グ業界の現在の状況を少し報告する事にします。
名古屋から韓国インチョン行きの飛行機は満席で、今の円高ウォン安の影響で日
本からの観光客が急激に増えている事を反映しているのだと思います。
前回、私が韓国を訪問したときは(2007年8月)円安ウォン高で、以前宿泊した
ホテルの値段が1.5倍位に上がっているのに驚いたのと、1997年の通貨危機から立
ち直ってそのころの経済状態は日本の不景気をよそに鉱工業生産増加率は二桁台で、
かなり景気が良い話を聞かされた覚えがあります。
それが、昨年5月以降アメリカの景気後退の影響とウォン高・円安でアメリカ市場にお
いての輸出産業が日本の商品に対して価格面で負けている現状を打開する為に韓国
政府が取った為替対策(ウォン安誘導)が裏目に出だした事で、鉱工業生産増加率も
減少し始め昨年11月には現在のアメリカ発の世界経済危機の影響で鉱工業生産増
加率マイナス14.1%、12月はマイナス18.6%まで急落してしまっているのが今の韓国の
現状です。
ウォン安も歯止めがかからず、現状の円高の影響で現在対円のレートは日本円100
円に対して1600ウォン前後(一年半前は日本円100円が800ウォン)になっており、
現在のウォンは2年前に比べて約1/2の価値で、ちなみのホテル代は前回訪韓したとき
の半額になってしまっています。
韓国の今の経済状況は、ウォン安で輸出にとっては追い風となるはずなのですが、世
界市場が極端に低迷している中、輸入原材料・エネルギー資源が極端に値上がりする
事になり、日本とは違った形で企業の収益を圧迫しており、内需の落ち込みもそうとうな
もののようで、日本より深刻な経済状況に陥ってしまっているようです。
韓国のフローリング業界も、住宅着工数の極端な落ち込みと原材料(ほとんどが輸入)
の極端な値上がりで、作れば作るほど赤字拡大になる傾向にあり、操業度は平均して
ピーク時の1/2以下になっているようです。
韓国のKS(日本のJAS相当)を取得しているフローリングメーカーはインドネシアのメー
カー2社を含めて23社ありますが、現状において木質(合板基材)のフローリングを有る
程度(数万坪/月)生産しているメーカーは4社程度で、その他に加工の一部や少量
の生産をしているメーカーが30社程度有ったようですが、昨年末から今年初めにかけて
かなりの数のメーカーが倒産・廃業になっているとの事です。
韓国における木質フローリングの生産能力は780万坪/年ありますが、昨年初めか
ら落ち込みが始まり、2008年には70%の550万坪/年に減少し、2009年予想は
380万坪/年に落ち込んでしまうと言われています。
生産品目のほとんどがオンドル(床暖房)対応の75mm幅・900mm長さ・7.5mm
厚のサイズで、合板基材に0.5~0.6mm厚の乾燥化粧単板張りで、表面はクリア
ーUV塗装品です。基材の合板はインドネシア・マレーシアからの輸入でしたが、ウォン安
とドル不足の影響でメーカーでの買い付けができない状態になっており、韓国産の合板に
切り替えているようですが、こちらも原木は輸入ですから、価格的にはかなりの値上がりに
なっているようです。
表面材の化粧突き板もほとんど中国・アメリカ・カナダからの輸入ですが、こちらも価格
的に合わないので、0.3mmのウエット単板を使い始めているところもあるようです。
韓国大手の生産能力120万坪/年の利建産業(EAGON)は、最近稼動を1/2
以下に落としており、2009年の生産は50万坪以下となると予想しているようで、釜山
の成昌企業も60万坪以下と予想しているとの事ですが、これは需要が落ち込んでいるこ
との影響もありますが、原材料の高騰の影響で採算が合わない状況での結果のようです。
LGケミカルは、LG建設への供給を主としている関係上ある程度の生産数を確保する
必要性から、OEM生産先で約50万坪/年の生産数を維持する為に、一部の材料を
LGケミカルが買い付ける方式に切り替えて生産しているとの事です。
二年前は、韓国のフローリングも着色カラーフロアーや表面塗膜を厚くした高級品が出
始めていましたが、最近の傾向としても表面状態の厚塗り(フローコーター塗布)製品や、
より高品質な商品の開発も行われており、WPC同等の物性を可能とする、ナノ技術応
用の含浸塗料を下地と突き板に含浸塗布したものの商品や、表面材に天然化粧単板
と特殊フィルムのプレスにより樹脂化した、高メラ板級の表面物性を持つフローリングの販
売も行われており、技術的にもかなりのレベルになってきていることは、ウォン安を背景に一
般商品も含めて、日本や中国の市場に輸出しようと言う動きが加速されるのではないか
と思います。
日本のフロアー業界も販売がかなり落ち込んで価格競争がより激化する現状において、
韓国の現在の特殊な事情を考慮すると、近い将来、少なからず韓国製品も輸入されて
くることも可能性としてあるのではと、頭の片隅にはおいておく必要があると思いますが、い
かがでしょうか・・・・。
2009年03月10日
車田 修
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2009年2月
目次
1.住宅関連