中国レポート
家電量販店創業者拘束と中国経済
11月22日に中国の富豪ランキング1位といわれる国美電器という、中国最大の家電
量販店の創業者・黄光裕氏(39才)が経済事件(株価操作により莫大な利益を上げ
た)に関与した疑いで公安当局に拘束された報道が世界中に流されましたが、中国国
内でも同様に報道されその後一次的に解放されたが月末に再度逮捕拘束されたと中
国内では報道されていました。
これらの中国での報道には、未確認ですが国美電器の都市部の一部の店では責任
者の不在(幹部も事件に関与の可能性か)から仕入れが止まったり、店の運営ができな
い状況に追い込まれており、多くの失業者が出るとのうわさまで出てきていると伝えていま
す。
国美電器は中国の280以上の都市に約1260の直営店を持つ最大手の家電量販店
で、その経営の強引さが時々話題には上っており、中山市の中心部でもこの数年の間
に以前の中小の量販店が国美電器に取って代わってきており、今では中心部だけでも
4店舗になり、他の家電製品販売店はほとんど消滅している現象が起こっています。
広東省の貧しい農村生まれの創業者の黄光裕氏が、苦労してここまで登りつめたと
の話とは対照的に密輸入された外国家電製品を安く仕入れて販売することから始まり、
その後事業を拡大して今では個人資産430億元(約6500億円)もの富豪となっている
事は一般的に知られており、数回にわたる巨額な脱税疑惑にも中国の公安機関から
の追求を逃れた形になっていたようです。
このような話は中国では、大小はありますが一般的に聞かれる(日本でも戦後の復興
期から高度成長期には似たような事があったようですが・・・)話で、親戚に共産党の幹
部が居る関係から、銀行から特別な融資を受けて事業展開をするとか、銀行や資産
家から集めた大量な資金を使って海外の設備を輸入し工場建設を行い、設備輸入に
関して莫大な裏金を要求、その後転売して2重に利益を得るのですが、結局稼動しな
い工場が点在する状況が4~5年前には多く発生して、急遽政府が銀行の融資引き
締め対策を取った経由もありました。
今回の報道は、現在の胡錦濤政権に変わって、今までの経済至上主義から法治重
視に政策が転換されてきている現われだと思いますが、最近の株価暴落による大衆投
資家の損失が社会問題化されている事や、アメリカ発の世界不況から輸出産業が大
きな打撃を受けており、中国の国内総生産GDPの成長率も二桁台から一桁に落ちる
状況があり、中国の毎年増加する労働人口(約2000万人)を加味すると8%を下回る
わけには行かない事情もあり、政治的に必要な判断になってきているようです。
又、特に中国におけるGDPに対する個人消費は、日本やアメリカの60%から70%に
比べて35%と低く、今後社会保障制度の年金・医療・雇用の拡充の強化を図らない
限り、個人消費が伸びないとの判断も政策の転換に関係していることと考えられます。
実際に精一機械の幹部社員の多くも地方出身者(精一機械が在る広東省中山市
以外)がほとんどで、中山市の市民権が簡単に取れない状況から結婚を延ばしたり、
子供の教育の問題(市立の学校に入れない)から家族と一緒に暮らせない等、多くの
不満が出始めていることは確かなようです。
中山市においても、未だに高級マンションの建設は続けられている一方で、売れ残り
や未入居のマンションが多く出始めて、海外からの投資目的に買われていたこの手のマ
ンションや住宅も思うように販売できない状況が現れてきているようで、この数ヶ月の間
に中山市のマンション販売価格も15%~20%近く下落してきており、来年はさらに下
がるとの予想もあるようです。
このように、北京オリンピック後の中国経済がかなり落ち込むのではないかとの予測が
当たったかのように印象を受けますが、現実には海外からの影響による輸出の落ち込
みが大きく影響しており、その為内需拡大策に力を入れる政策が発表されており2008
年のGDP成長率は9.8%予測となって、2009年は9.3%前後を維持するとしています。
全体的に内需拡大の為には、公共投資はもちろんですが個人消費の上昇の為の
対策を進めなければならず、農村部と都市部の所得格差ばかりではなく、都市部にお
ける輸出企業の大型倒産等による賃金未払いにおける集団的な暴動や、タクシー運
転手の賃金をめぐるストライキ等、その他労働者と資本家の収入格差による社会的な
さまざまな問題をなんとか沈静化・正常化し、個人消費を上昇させる政策を模索して
いるのが今の中国の現状ではないかと思っています。
しかしながら、日本においても経済の急激な悪化(実際には数年前から建材業界や
中小企業の間では、冷え込んでいたというより過去10年位良いときが無い状態ですが、
自動車や家電大手の業界の好調を背景に日本経済は良いと言われていました)はこ
の数ヶ月で一気に表面化してきており、中国と同じように輸出産業を中心に好調だった
自動車産業や家電産業が一気に足をすくわれた様な状態になってきており、期間工や
派遣社員の数千人規模の解雇が行われ、それは数年前の規制緩和政策の失敗だと
かの論評が紙面に出ていますが、実際にはその仕組みを上手く利用して低賃金・低経
費の人件費をベースに多大な利益を捻出していた大手企業の経営理念に疑問を感じ
るのは私だけではないとおもいますが・・・・。
中国や韓国であれば確実に暴動等の集団行動に発展している、日本人は不思議な
人種だとある韓国人が言っていました。
2008年12月10日
車田 修