■2010年住宅&住宅関連企業動向の注目点■
-海外進出/公開情報まとめ-
              

2010年は住宅&住宅関連企業の海外進出関連記事が目立った。国内住宅市場縮小を背景に、新たな収益源を求めて海外進出を加速させているようだ。内需型産業といわれている住宅産業が海外へ動き出した。海外進出の訴求点は環境配慮型住宅(そのノウハウ)である。2011年もこの流れには要注目だ。公開情報からの各社の動向の主要記事のポイントをまとめた。
 (備考)情報源-日本経済新聞四国版。< >内は月-日/年P(ペ-ジ)の順で、年の10は2010年。

住宅・不動産企業・ゼネコン
  • 積水ハウス
    • <1-18/10P9>2010年内にロシアの住宅市場に進出。モスクワ近郊で木造住宅を主体とした分譲住宅を手掛ける。2010年内に中国の住宅市場に進出。大規模なマンション開発開始。
    • <9-16/10P1>中国の不動産開発事業に参入。2011年春までに遼寧省シン陽市に鉄骨住宅の工場建設。同市内で低層階住宅などを建設、中心部ではオフィスやホテルなどの複合施設も開発。住宅メ-カ-が中国に本格的な生産拠点を設けて開発に乗り出すのは珍しい。
    • <9-28/10P11>米国で不動産開発開始。米不動産開発のニュ-ランド・リアル・エステ-ト・グル-プ(カリフォルニア州)と共同でヒュ-ストン西部で1200区画(199ヘクタ-ルの土地購入)の居住用住宅を開発。3年後までに発売。今後/ロシアなどへも。
    • <10-14/10P12>米バ-ジニア州ラウンドウン郡の都市開発事業に参入。中堅デベロッパ-の米ミラ-・アンド・スミスと組んで1040戸の宅地を開発(住宅部分開発担当)。11年から発売予定。
    • <12-4/10P9>日揮と積水ハウス/サウジアラビアでの住宅事業で提携。断熱性に優れた建材で省エネルギ-効果を高めた住宅を、現地の中所得者層などに販売。サウジ/原油高を背景にした経済成長と人口増で住宅開発が活発化。
  • 丸紅と三井不動産レジデンシャル
    • <2-27/10P15>共同で、中国・上海郊外の住宅開発に乗り出す。マンションなど8棟、1180戸建設。9月から販売。丸紅/中国で5番目(実績約4000戸)、三井不動産レジデンシャル/初。

     
  • 鹿島
    • <4-3/10P11>インドネシアのジャカルタで進めている都市開発事業で、新たに高級ホテル(32階建て/500室)と高級アパ-ト2棟(30階建てと24階建て/計約200室)建設決定。
  • パナホ-ム
    • <4-28/10P11>台湾の住宅内装やリフォ-ム事業に進出。販売と施工の子会社を現地に設立した。パナソニックやパナソニック電工の住設機器や建材を使ってマンションの内装工事などを拡販。同社の海外進出は初。将来は戸建て住宅にも参入。
    • <11-19/10P13>台湾のデベロッパ-の新光国際開発(台北市)と業務提携した。新光開発が台湾の中北部で販売する4棟7戸の分譲地向けに、パナホ-ムが持つ設計や仕様のノウハウを提供。将来は台湾で宅地開発に乗り出す考えだ。
  • 大和ハウス工業
    • <5-12/10P13>ベトナムでマンション・戸建て住宅事業に乗り出す。中国で大規模なマンション開発を進めているが、アジアの他国でも住宅事業の拡大を急ぐ。日本国内の住宅市場は低迷しており、人口が増えている新興国の需要を掘り起こす。
    • <11-11/10P11>中国での大型マンション開発事業を拡大する。大連市(マンション)、蘇州市(マンション)、無錫市(マンションと初の戸建て住宅/約400戸)で計3件の大型開発が進行中。北京市や南部のセッ江省、広東省にも広げる。「ノウハウを蓄積した」と、本格展開に踏み切る。今後10年間売上高目標/3000億円。
    •   
  • 三井不動産
    • <5-21/10P13>中国・天津市で住宅開発開始。現地企業と共同で、マンションや戸建て住宅を計2650戸を開発。中国の住宅需要は底堅いと判断。現地でノウハウを獲得して海外事業を将来の収益源に育成。
  • オリックスと大京
    • <日経7-21/10P10>台湾や中国の投資家向けの不動産事業に乗り出す。台湾の不動産大手・信義房屋仲介と組んで日本国内で開発したマンション住戸などを台湾や中国の投資家に紹介。日本の不動産市場を安定投資先とみる投資家が東アジアでも増えると判断。
  • 住友商事
    • <8-5/10P12>中国・上海市の不動産開発会社・上海毅豪房地産に出資(約35%/約17億円)、同市内の大型不動産開発プロジェクトに参画、戸建て・マンションを約630戸建設し、商業棟も建てる。住友商事/2カ所目。今後も中国で500-1000戸供給目標。
  • 建設用特殊ネジ大手の日本パワ-ファスニング
    • <9-11/10P11>中国で不動産開発事業に参入。現地企業と合併で上海市郊外にマンション約500戸と商業施設を建設。中国で建設用特殊ネジの生産や住宅用資材の製造販売事業を手掛けている。不動産開発参入は本業との相乗効果を狙う。
  • 森ビル
    • <9-16/10P9>アジアで大型商業施設のコンサルティング事業に乗り出す。まず、韓国で15件のコンサル受注。アジアは経済成長に伴い複合商業施設の需要が高まるなか、六本木ヒルズ開発などで培ったノウハウを活用。コンサル事業を中国や台湾にも広げ自社開発をアジアで本格化する布石へ。
    • <11-3/10P11>中国の子会社・森ビル(上海)を通して所有する上海の超高層ビル「上海環球金融中心」の一部フロア-を売却する方針を固めた。売却額/400-500億円規模。
  • 三洋ホ-ムズ
    • <9-22/10P11>中国、韓国、台湾で戸建て住宅事業に乗り出す。日本から鉄骨などの主要部材を輸出し、現地組み立て方式を採用。早ければ2011年から事業化。国内需要の低迷で住宅大手が相次ぎ海外進出を決める中、中堅メ-カ-にも同様な動きが。
  • 日立製作所
    • <9-30/10P11>中国・天津市が進める環境配慮型都市「天津エコシティ」建設計画でスマ-トグリッドの構築に参画。エコシティ内に研究開発拠点(人員/200人規模)を設けて受注活動強化。
  • 三菱地所
    • <10-5/10P15>欧州で不動産投資事業に参入。不動産ファンド運営会社・英ヨ-ロッパキャピタルグル-プの発行済み株式の75%を同社の経営陣から取得し子会社化(運用資産残高/2300億円)。

    • <11-12/10P9>海外で不動産開発を本格化。2011年度にもベトナムで分譲住宅(マンション)の開発に着手。「経済成長力の高いアジア地域でのオフィスビルや住宅の開発で収益を得たい」(社長)。海外事業の連結営業利益を早期に11年3月期の3倍の300億円規模に。
    • <11-25/10P13>24日/ベトナムで住宅開発を始めると正式発表。シンガポ-ルの不動産大手キャピタランド、政府系投資会社のGICリアル・エステ-トと共同出資する投資会社を設立、ホ-チミンやハノイなどでマンションを建設。経済成長を続けるアジアへの進出で収益源の多角化目指す。
  • ダイビル
    • <11-6/10P11>ベトナムでオフィスビル賃貸事業に参入。70-80億円を投じ、2011年度にホ-チミン市内で大型オフィスビルの建設に着手。現地に進出の日系や外資系の企業をテナントに募る。国内の不動産市況が低迷する中、同社として初めての本格的な海外事業に乗り出す。
  • 大成建設
    • <12-9/10P13>2011年度をメドにベトナムに設計会社を設立。絞り込んでいる海外の工事量を再び3000億円規模に拡大し、収益向上を狙う。設計の担当者など約150人を現地で採用。
  • 東急不動産
    • <12-14/10P11>中国・上海市で賃貸マンション管理事業開始。会社更生法手続き中の穴吹工務店と現地不動産会社とのマンション管理合併会社の穴吹出資分を引き継いだ。現地の不動産ノウハウを手に入れ、将来の海外事業拡大につなげる。穴吹工務店は中国から撤退。
  • 住宅メ-カ-動向
    • <12-4/10P9>国内の住宅市場が伸び悩むなか、大手住宅メ-カ-の海外進出が相次いでいる。中国やタイなど経済成長が著しい地域では所得水準が大幅に向上。現地の富裕層などに、品質面で優れた日本の住宅の需要が膨らむとみているためだ。大手住宅メ-カ-の特徴/工業化住宅、製品管理技術が優れ、品質や施工レベルが高い。
                                          
建材・住設・その他
  • 住生活グループ
    • <1-8/10P13>トステム/韓国のLGグル-プとの合併会社のLG-TOSTEMが忠清北道に工場建設。現地の高層ビルやマンション向けに、アルミサッシやカ-テンウオ-ルを生産。
    • <6-3/10P13>住生活グル-プ/グル-プ挙げて中国での事業を本格展開し、2009年度の46億円だった中国国内販売額を、13年度に10倍の500億円に引き上げる計画。背景/日本の住宅着工件数が低迷するなか、生産基地だった中国市場を有望市場としてとらえ直し、中国販売を強化。中国事業拡大の主力となるのが、傘下のINAXが買収した水栓金具世界大手アメリカン・スタンダ-ドの中国を含むアジア・パシフィック部門(09年末/73都市に76の販売拠点を持つ)で、グル-プで相互に活用。
    • <9-12/10P1,3>住設大手/中国を開拓&マンション需要に照準。日本の住宅市場が成熟期に突入、マンション需要拡大中の中国の市場開拓急ぐ。住生活グル-プ/中国家電大手のハイア-ルと現地に合併会社設立。ハイア-ルの販売網でトステムのサッシやINAXのトイレなど販売。中国国内販売額を13年度に500億円に引き上げるための戦術。
    • <10-26/10P13>住生活グル-プ/中国の高層ビル壁材大手の上海美特幕ショウ(売上高/120億円)を傘下におさめる方針を固めた。中国は高層ビルの建設が急増、外壁材の需要高まっている。上海美特の売上高を500億円へ。

    • <11-10/10P13>INAX/中国に外壁用大型タイルの新工場を遼寧省シン陽市に建設。資本金13億円で生産子会社設立。2012年春稼働。売上高/13年度に2億元目指す。製品は現地の建設会社や開発会社に売り込む。蘇州に床用タイル工場。

    • <12-17/10P13>住生活グル-プ/中国家電大手のハイア-ルと合併で設計会社を設立。2010内には生産の合併会社設立でも合意の見通し。両社は中国で住生活グル-プの住設機器や建材を販売する事業提携も計画。提携効果は約100億円。中国国内販売額/13年度500億円目標達成の戦術の1つ。
  • 南海プライウッド
    • <1-13/10P31>同社のマレ-シアにある子会社を清算し、海外の原材料調達拠点をインドネシアに統合、一本化でコスト削減につなげる。
    • <9-10/10P29>インドネシアで植林事業を展開。2011年3月期中に55ヘクタ-ルの植林を実施。2011年度以降も続け7年で400ヘクタ-ルを植林。自社で使用する合板原料を「自給自足」できる体制を目指す。
  • 浴槽メ-カ-のアステック
    • <2-3/10P13>中国・天津市で建設中の高級マンションとホテルから、木と石で造る和風の浴槽を計100個受注。今後もアジアを中心に富裕層向け市場を掘り起こす。
  • 生活用品製造卸のアイリスオ-ヤマ
    • <2-4/10P13>中国の販売体制拡大/2012年中に直営店を現在の7倍の300店に拡大、売上高100億円へ(10年12月期見込み/50-60億円)。日本市場の飽和感が強まる中、消費意欲が旺盛な中国で攻勢をかける。

    • <8-19/10P11>中国の蘇州市にプラスチック収納品や木製内装家具の工場を建設。中国市場を本格開拓するための主力工場に位置づけ、上海地区の販売網に供給(直営店や新築マンション向けに内装家具を供給)。中国市場向け工場は初。
  • TOTO
    • <2-16/10P12>南米で衛生陶器の販売に乗り出す。2010年内にもブラジルに初の販売代理店を設けて輸出を始める。
    • <10-28/10P11>中国で衛生陶器などの生産能力を拡大。ショ-ル-ムも充実させる。大連の水栓金具工場の能力を倍増。上海の衛生陶器工場では建設中の第2工場の能力を引き上げる。
    •                              
  • 物流大手のセンコ-
    • <2-18/10P11>海外で住宅関連事業を拡大/5月からオ-ストラリアで住宅建材の物流事業を開始。中国で現地調達の建材を日本に輸出するための物流センタ-の新設検討。背景/国内の成長が見込みにくい。
  • YKKAP
    • <2-28/10P7>インド、ベトナム、マレ-シアの3カ国に進出。各国で順次、販売活動などを手がける現地法人設立へ。新興国の建設市場拡大で、サッシの需要が伸びると判断。
  • パナソニック&パナソニック電工
    • <5-24/10P15>パナソニック/中国とタイで、水回り製品や白物家電など生活に必要な機器・設備をグル-プで一括提供する「まるごと事業」を海外でも本格展開。
    • <7-9/10P15>パナソニック/中国政府が進める省エネ照明への切り替え補助制度の認定企業へ。2010年に前年比3倍の650万本の蛍光灯販売枠を取得。
    • <8-7/10P1,3>パナソニック/インドで、三洋電機、パナソニック電工の完全子会社化をにらみ、販路再編に着手。家電製品、照明器具など住宅用機器の一体販売が柱。10年度中にインドでパナソニック電工が持つ約12000店を通じ、パナソニック、三洋電機の家電製品を販売。海外市場で統合効果をいち早く引き出し新興国開拓のモデルに。

    • <8-10/10P11>パナソニック電工/インドで住宅向けのコンセントやスイッチ、ブレ-カ-などの電設資材を増産。パナソニックはインドを中長期的に戦略地域と位置づけ。
    • <9-15/10P15>パナソニック電工/住設大手-中国を開拓&マンション需要に照準。不動産大手の億達集団と省エネ住宅を開発。パナソニックグル-プの省エネ型のシステムキッチンや冷蔵庫などを内装したマンションを開発。

    • <11-5/10P11>パナソニック電工/2012年度までに中国で製造販売する照明器具の部材を全て現地調達に切り替える。現在、必要な部材の4割を日本から持ち込んでいる。部材の調達コストを3割引き下げる。

    • <12-7/10P11>パナソニック電工/自動車や家電製品などに使う制御機器の営業拠点を中国とインドで大幅に増やす。同事業の18年度売上高を09年度の1.9倍にあたる3000億円に引き上げるのが目標。
  • パラマウントベッド
    • <3-21/10P7>2010年内にもタイ・バンコックに医療用ベッドの生産・販売拠点を設立し、タイ市場に本格参入。インドネシアの工場から輸入し、完成品に組み立てる。

    • <8-30/10P9>アラブ首長国連邦に販売拠点を設ける。中東での自社販売拠点は初。同地域の約10カ国に置いた販売代理店などの連携を強め、病院への販売拡大に取り組む。
    • <11-2/10P3>タイに医療用ベッドの販売会社設立。経済成長が続くタイの内需を取り込むと同時に、海外生産における中国依存度引き下げを狙う。インドネシアの自社工場で生産した医療用ベッドを輸入販売。
  • 大建工業
    • <11-8/10P9>中国での事業を拡大。同社の床材や壁材を扱う代理店の数を現在の3倍の100社に増やすほか、高機能壁材なども投入。ショ-ル-ムも80から300店舗へ。中国を海外展開の主要拠点と位置付けており、2013年3月期の中国での売上高を16億円と、現在の2倍以上に引き上げる。
  • 鉄鋼商社の伊藤忠丸紅鉄鋼と丸紅建材リ-ス
    • <11-13/10P10>中国の上海市に現地企業と共同で土木工事に使う建材のリ-スや販売を手がける会社設立。港湾や鉄道工事などに使う鋼矢板やH形鋼などを扱う。
  • 関西ペイント
    • <12-14/10P11>南アフリカの塗料大手のフリ-ワ-ルド・コ-ティング(2010年9月期売上高/約330億円、内装や建築向け塗料に強み、南アでのシェアは3割)に対しTOB実施。成長が見込まれるアフリカでの事業基盤を確保し、新興市場の開拓を加速。
  • 建材各社/岡部、ネツレン
    • <12-16/10P13>建材各社/アジアで相次ぎ「副業」の自動車部品、素材の生産能力増強に乗り出す。→建設現場の足場などを製造する岡部/自動車バッテリ-部品(端子)工場を中国で初めて建設。基礎建材メ-カ-のネツレン/サスペンションに使う鋼線を中国で増強。→国内の建材市場縮小で主力の建材事業が振るわず、「副業」事業で「本業」を補う。 
  • 日鉄住金建材と日鉄商事
    • <12-23/10P12>現地の鋼材加工会社と共同で農業水路や小規模な河川の整備などに使う建材(冷間鋼矢板)の生産を2011年9月に開始。年産能力10万トン設備(圧延から鋼板まで)を整える。
  • 徳島県森林組合連合会
    • <12-23/10P27>県産木材の原木を台湾(土木用資材)へ試験輸出。輸出量/約2200本(口径10-18mm)。輸出作業や販売に関するノウハウを蓄積、海外での需要開拓目指す。