中国レポート
中国中間層
11月に入って日本は朝夕の気温も下がってきて、暖房が恋しい季節に近づいています
が、広東省中山市はまだ日中の気温も25℃位を維持しており、半袖でも過ごせるようで
す。 尖閣諸島の問題もあまり日中ともニュースに登場しなくなって落ち着いていますが、
日製品不買運動というより、買い控え雰囲気が一部にはまだあるようで自動車業界や家
電業界は苦戦しているようです。
中国の経済も今年の成長率が、政府目標値の7.5%を下回るとの見方が大勢を占め
ているようで、昨年の9.3%から大幅な減少となるのですが、ヨーロッパ経済の落ち込みに
よる輸出の減少に加え、日中関係の悪化による影響が追い打ちをかけている状況のよう
です。リーマンショックの時と同じように内需拡大策を取るにしても、インフレが抑制できない
状況において、これといった手が打てないと言われていますが、現状でも問題になり始めて
いる、中小企業の倒産・廃業や業界の再編成、失業者の増加が今後より深刻になってい
くことが予想されていますが、これは中国ばかりでもなく日本をはじめ世界的な問題となって
きています。
今回は将来の中国の内需拡大のカギになる、中国の中間層に関する情報をまとめてみ
ましたので、参考にしてください。
現時点での中国の経済における消費活動は、高所得者層と言われる年間世帯所得が、
約22万元以上(日本円で約280万円)の人が人口の約10%(約13500万人)おり、
その人たちが中国の消費の80%をまかなっていると言われていますが、その人々は家を持
ち、中級以上の自家用車を複数台所有し、平均的には日本の中間層を超えた生活水
準をこの5~6年間で手に入れている事になります。 中国の一般家庭は夫婦共稼ぎがあ
たりまえで、一人っ子政策の為、高所得者層と言われる世帯所得は日本の平均賃金をう
わまわり、食費・教育費や光熱費等に回すお金も日本よりはるかに少ない事から、かなり
余裕のある生活を送っている事が想像できると思います。 又、日本的に考える高所得者
と言われる特別
てきています。
このような中国における高所得者層と言われる人々は、日本の中間層と同じように普通
の生活に必要なものはほとんど買ってしまって、現在の消費活動は海外旅行や投資・趣味
への支出が中心となり、日本や韓国への中国人の旅行者の急激な増加等がそれを現して
おり、逆に中国の内需が今一歩伸び悩んでいる原因の一つと言われております。
世界的に言われている税収や消費力の中心になる中間層を増やす対策が、今後の中
国の経済成長の安定には欠かせない状況となってきており、都市部での最低賃金をこの
数年で急激に高くしている(中山市で1700元/月・・・7年前の約3倍)事や、内陸部に
おける企業進出の促進対策による、沿岸都市部における質の良い出稼ぎ労働者の減少
により、現実的な沿岸都市部での労働者の賃金は3000元~5000元/月まで上昇し
てきています。
今後中国の上位中間層(家を持ち・車を持ち、普通の生活ができるレベル、年間世帯所
得が15000US$以上)がどの程度増えていくかが、中国の内需が増えていくポイントとなると
思いますが、労働者の賃金上昇がなければ中間層の増加もないことも忘れてはならない事
だと思います。
2012年3月に三菱UFJリサーチ&コンサルティングが出した推計がありましたので、下記
に抜粋しますので参考にしてください。
階層所得の定義(年間所得)
低所得者層の世帯所得:5,000US$以下
下位中間層の世帯所得:5,000US$~15,000US$
上位中間層の世帯所得:15,000US$~35,000US$
高所得者層の世帯所得:35,000US$以上
中国の2015年と2020年の推計の各階層の人口(比率)
2015年 2020年
低所得者層の世帯所得: 55,000万人(40.1%) 46,000万人(33.1%)
下位中間層の世帯所得: 46,000万人(33.6%) 43,000万人(30.9%)
上位中間層の世帯所得: 20,000万人(14.6%) 26,000万人(18.7%)
高所得者層の世帯所得: 16,000万人(11.7%) 24,000万人(17.3%)
2010年の統計では、
低所得者層の世帯所得: 66,000万人(49.2%)
下位中間層の世帯所得: 52,000万人(38.8%)
上位中間層の世帯所得: 12,000万人(9.0%)
高所得者層の世帯所得:
4,000万人(3.0%)
上記推計資料は、平成23年度アジア産業基盤強化等事業(新中間層獲得戦略に関す
る基礎的調査)-報告書-を参考にしました。
2012年11月10日
車田 修