「PILOT-RC」ラジコン飛行機のメーカーの話
今回は、精一機械と同じ市内(中国広東省中山市)に在る「PILOT-RC」という大型
アクロ用ラジコン飛行機のメーカーの紹介を通じて、中国のニッチ産業の世界戦略と技術
者の仕事に対する考え方の原点を再確認した話です。
以前にも少しご紹介しましたが私の趣味はラジコン飛行機で、今回名古屋での所属R
Cクラブ(竜泉寺ラジコンクラブ)のメンバー6名と一緒に、精一機械の見学とPILOT-RCの
工場見学と交友の目的で中山市を訪問しました。
このPILOT-RCの経営人とは2年前に中山市のラジコン飛行機の友人の紹介で知り合
い、時々訪問したり、無理を言ってこのメーカーの機体を格安で分けて貰ったり、一緒に飛
行機を飛ばしに行ったりしている関係で、今回の工場見学等もこころよく受け入れてもらい
ました。
今回訪問した時に、ちょうど台湾のMr.LIN(林さん)という人が6月にアメリカで開催され
るXFCというラジコン飛行機の世界大会の、100CCガソリンエンジンクラスのアクロ競技に
出場する準備にPILOT-RCに来ていて、一緒に昼食を食べたり、中山市の三角という場
所の実機の民間飛行場を借りての出場機の調整フライトと、PILOT-RCの350CCクラス
の大型新作機のテスト飛行に行ったりして、同じ趣味仲間としての交流をしてきました。
PILOT-RCはMr.LINのスポンサーとして彼らの商品を世界に販売する戦略の一つとして
XFCへの参加を企画しているようで、彼らの一つの販売活動だと思いますが一般的にとら
えられがちな、構成されるマシーンの内容やその性能は、たかが玩具と言えるようなレベルで
は無く、その商品価値をいかに表現するかを真剣に追及している彼らを見ていると、私たち
産業機械を手がけている者にも共通するところが感じられ、大いに参考になるところも有る
と考えています。
このPILOT-RCと言う会社は3人のラジコン飛行機を趣味とする人達が出資して始めた
会社で、開業3年と言う短期間で、USA・ドイツ・日本・南アフリカ・韓国他世界21カ国に
販売代理店を確立しており、現在の従業員は約100名で生産規模に関しては機体の
大きさにもよるようですが、月産数百台と言っていますがこの狭い業界の中では世界のトッ
プクラスになっているのではと思います。
ここで生産している機体は、ガソリンエンジンのサイズで30CCクラスから450CCクラスま
で、翼長で1850mmLから4580mmL、実機の25%から50%の大きさのもので、7機種とそ
れぞれのサイズを考慮すると、約30種類の製品となり、カラーを考慮すると約150種類の
製品を製造していることになります。
私たちも以前から趣味の世界ですから、自分の飛ばす飛行機は自分で組み立て製作
をしてきていますので、この工場の製造工程は全て理解できるのですが、当然の事として
機械化や自動化には限界があり、かなりの手作業での製作工程になるのですが、冶具の
使い方や、各部品の加工精度の出し方、それらのチェック方法から管理体制まで実にきめ
細かな方法を取っている事、外注での製作品に関してもテストを繰り返してより良い品質
のものを求めているようで、これがたった3年の創業の会社かと思うほど整然とした工場内と
工程を見るにあたり、私たちは彼らの物作りに対するしっかりした考え方に驚きを感じなが
ら工場見学をしていました。
彼らの扱う材料はシナ合板とバルサと言われる軽量な木材、FRP成形材、カーボン成
形材、PVC成形材、アルミ合金等の板材、特殊な熱収縮性カバーフィルム、その他に外
注加工や購入品でプラスチックの小部品やゴムタイヤ、アルミ成形品、梱包用のダンボー
ルやスチロール成形品等です。
又、機械設備としてはレーザーカット(CADCAM)やサンダー、塗装設備(手吹きスプレ
ー)、ボール盤、糸鋸盤位で、後は工具と冶具をいかに使うか、工程によってはかなり熟練
した作業者でないと上手くできない所も数多くあるのですが、感心するほどの完成度を持っ
た製品が製造されています。
この業界は昔、日本にも数多くのメーカーが在ったのですが、今はほとんど無いに等しく、
一部特殊な製品を個人レベルの会社が製造している状態です。
中国におけるこの種の商品は、世界的にも仕上がり面等を含めて高い評価を得られる
ようになってきており、周辺機器である電子機器類の操縦装置や小型サーボモーター・エ
ンジン等に関しても、もともと日本が開発や製造の中心だったのですが、現在は日本メー
カーも中国や台湾等で製造をするようになり、それらの技術や開発も海外移転が加速さ
れて、中国メーカーの品質も急激に良くなってきている事は否定できない状態です。
又、このPILOT-RCのように中国内販売を後回しにして開業時から世界に販売する事
を前提としての経営戦略は、まさにニッチ産業としてのモデルケースなのかもしれません。
彼らの話としては、中国国内には既に数多くの同種のメーカーが在り、国内販売をする
には品質と性能を重視した商品は、今現在において価格的に受け入れられない為、海外
に販売経路を決めて展開しているとの事でした。
まさに精一機械の製造している設備機械も同じような位置付けのような感じを受け、私
自身も今後の方向性を考えさせられる体験でした。
今回の訪問時の写真を数枚掲載しますので、興味のある方は見てください。
2010年6月10日
車田 修
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