中国レポート
電子点灯式UV照射装置
10月に入り名古屋地区は秋晴れの天気が続き過ごしやすい季節になってきたようですが、
私は先月末からインドネシアに寄って、中国精一機械にきています。インドネシアはまだ乾季
のようでそれほど暑くなかったのですが、中国広東省は台風の影響か1週間ほど雨が続いて蒸
し暑く、不快な状況になっている中、精一機械で使用しているパソコンがウイルスに感染、駆
除はしたのですがほとんどのファイルが破損という状況になって、原因は精一の誰かのUSBから
ファイルをコピーしたとき、感染したのではと思っていますが、ウイルス対策ソフトを入れていなかっ
たのが悪いのであきらめて、この中国レポートも昨日書いた内容を思い出しながら再度書き出
しました。
精一機械には11月11日(水)~11月14日(土)にポートメッセなごやにて開催される日本木
工機械展に出展する電子点灯式UV照射装置の試運転に来ています。今回はこの新しいUV
照射装置に関するレポートをお届けします。
尚、木工機械展はでグループ会社の株式会社杉井鉄工所のブースNo.A-607に出展します。
この電子点灯UV照射装置の最大の特徴は、UV光量を100%から10%までリニアに調整で
きることにあります。従来のトランス方式のUV照射装置は2段階(最大50%出力)の切り替え
による光量の調整はできましたが、無段階での調整はできず常にインプットの100%の電力消
費が必要でした。 従来から日本のUV照射装置メーカーでも電子点灯やインバーター点灯の
名称で印刷業界向け等に販売されていますが、10%までリニアに調節できる装置は無く、電
力消費量の削減や塗料組成に合わせた光量調節が自由にできることに大きなメリットが出る
と考えております。
一般にUVランプは使用初期段階を100%の光量として、使用時間経過とともに光量は減衰
していき、70%光量を寿命として交換する方法がとられていますが、その間従来のトランス式
では100%の電力消費量で運転することになります。この電子点灯装置は初期段階から必要
な光量の70%で運転を開始し、経過時間とともにインプット出力を上げていく方法をとることが
でき、その時点における必要な電力消費量で運転できることになり、この関係では約10%~15
%の電力を削減できます。
電子点灯ユニットのもうひとつの特徴として、初期点灯から光量安定までの時間が30秒~60
秒と極端に短いこと、10%出力の待機状態から100%出力までに要する時間は1秒以内となっ
ている事から、ワーク検出との連動運転も可能になり、仕掛かり時や品種変えの待機電力が大
幅に削減されることになります。操業条件によって変わりますが平均的には従来のトランス式に
比べて30%以上の電力削減が可能になりと考えています。
UV照射装置に組み込まれる電子ユニットは、イタリアのHPE(High Power Equipment)社の物
で、その子会社である香港のDr.UV社がアジア地区の販売を担当しており、コスト面から中国
深センの工場でイタリアから持ち込んだ電子基盤とその他の部品をアッセンブリしています。
アドペックはDr.UVの日本及び韓国の総代理店として電子点灯ユニットの販売と、合弁会社
精一機械で製造されるJ-oneブランドのUV照射装置に組み込んでの製造販売をします。この
電子点灯ユニットに適合するUVランプはDr.UVがドイツのメーカーにOEM生産させたものを併せ
て供給販売することになります。
電子点灯によるUVランプの波形は矩形波で毎秒数万回の点滅をしており、従来のトランス式
は正弦波で毎秒50又は60回の点滅をしていますので、理論的には高光密度から電子点灯の
発する光量はトランス式の1.5倍以上と言われています。
提供するUVランプは、水銀ランプ、鉄ランプ、ガリウムランプの3種類で鉄やガリウムが入ったラン
プはメタルハライドランプとして、印刷業界では一般的に使用されていますが、建材木工業界で
は特殊なもの以外は水銀ランプが標準で使用されています、海外ではカラークリアー塗料が多
く使用され、着色の補助的な感じで鉄ランプが使用される事も多く見かけます。日本ではランプ
のコストが高い関係からあまり普及しなかったのかもしれませんが、今回供給されるランプ価格は
鉄ランプが水銀ランプの10%〜20%高程度に押さえられており、鉄ランプが水銀ランプに比べ
て波長領域が広い事や光量も30%〜50%程度多く出る特性から、今後塗料の多様化や
省エネの観点から鉄ランプが多く使用される事になるのではないかと考えています。
日本においては、UV照射装置の需要が頭打ちになっており、既存メーも世界の開発教競争
から脱落しつつあるのかもしれませんが、中国国内においても類似したUV電子点灯ユニットが
低コストで出回り始めており、品質的にまだ問題が多いかもしれませんが、数年後にはトランス
タイプの装置は姿を消している事になるのでしょう。
少なくとも、需要の無い業界は衰退していく事になるのは仕方ないのかもしれませんが、私た
ちの業界おいても、コスト面を考えての海外進出から技術維持と開発を念頭にした海外進出
が主流な考え方になってきているのではないかと思います。
2015年10月10日
車田 修
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