中国レポート
香港民主化デモ
急激に秋が深まり、朝夕は肌寒く感じる季節になってきましたが、中国中山市は日中の気
温が25℃以上の日が続いており過ごしやすい季節になっています。精一機械において日本
向けや東南アジア向けの設備の試運転や出荷が春節前後まで予定されており、人の往来
が増える中、今月は中国居留証の申請で3週間中山市に足止めをされる状態で、過ごしや
すい季節だから良いのかと考えつつ、帰国時の気温差を心配しなければならないのかもしれ
ません。
今年9月28日に香港で始まったデモは、学生を中心とした民主化を求める抗議参加者た
ちが、街頭に殺到して幹線道路を封鎖する行動をとったのですが、現在も数か所で道路占
拠が続けられており、香港の中心部を中心に道路占拠による影響で、数か所にわたり交通
規制が実施されています。
当初、警官隊がデモ隊占拠の撤去に向けて衝突した際に、催涙ガスを使用したことからの
反発でデモ参加者が急激に膨らみ、占拠拠点も数か所に増えた経緯があり、その際に催涙
ガスをかわすために傘を広げて防御した写真が世界中に広まり、「雨傘革命」と呼ばれていま
す。
デモ発生から1か月以上経過した事もあり、日本ではあまりニュースになっていませんが、香
港では一般テレビの放映の画面を割いて、デモで占領されている場所の中継が継続して行
われており、その動向を全ての香港の人々が見られる状況になっているようで、香港国際空
港内のテレビでも常時確認する事が出来ますが、もともと交通規制状況を公表する目的で
始まったものが、常時映像での中継と言う形になっているのは、警官隊が暴力を使って排除
する事が無いように市民の監視下に置くために放映しているのか、真の目的は解りませんが、
それくらい香港の人々にとっては、大きな関心と直接生活に影響を与え続けている事が解り
ます。
今回のデモは、1997年香港が英国から中国に返還された時点で、「一国二制度」の原
則と「基本法」と呼ばれるミニ憲法が制定され、外交と国防を除き高度の自治権を香港に
与え、基本法では次回の選挙では市民の直接選挙(普通選挙)を認める事としていますが、
現行では行政長官は北京派議員と財界指導者で構成される委員会によって指名されて
います。
中国政府は、2017年の香港行政長官は市民の直接選挙で決める事を承認していま
したが、その選挙候補者の選択に関して、中国政府が支配する指名委員会が認可した
人物のみ長官候補になれるという、一定の制限を8月に決定した事に反発し撤回を要求
する抗議運動に繋がり、香港の完全な民主化への要求として今回のデモが実施されたとの
事です。
デモは多くの学生が中心となって香港市民を巻き込んだ形で発展し、世界中に報道され
た事と警官隊が催涙ガスを使用した事から抗議デモの規模が膨らみ、1989年6月4日に
起こった、第二次天安門事件における集会に参加した学生等の若者に対して中国政府が
武力行使をして、多くの市民を殺した事件と同じ事を起こさせてはならないとする、世界中
からの監視状態を引き起こし、中国政府も香港政府も強引な強制撤去を行うことができな
い状況もあり、1か月を超えて継続される事態になっているようです。
香港の世論調査でも70%以上の人が、撤収するべきだと言う調査結果もあるようで、
道路占拠と言う一般の人々の迷惑になるような形態を変える必要があるとの意見が、大
勢を占めていく可能性もありますが、北京政府も対応に慎重になっているようで、香港の北
京派と言われる中にも現長官の指導力に対する不満も出てきているようです。
今回のデモは真の民主化に向けた抗議行動となっており、当事者でない私共がこの事態
に対してどうこう言う事もできませんが、日本を含めた民主国家と言われている各国において
も、真の民主化となっているのかとか、民主化が本当に正しい選択なのかも含めて多くの疑
問があり、多くの先進国が議会制民主主義により政治が運営されていますが、間接選挙・
直接選挙の制度等、実際の制度に関しては全ての国において長い時間をかけて少しずつ
改革していく途中の段階であると考えられています。
今回の香港デモに関しても、以前中国共産党支配から逃れる目的で香港に移った市民
が多くを占める中、やっと長期の英国支配から解放され一国二制度という枠組みの中でも、
民主的な政治体制が保証されたと考えた人々が選挙制度の制限を中国政府が決めた事
で、現在の共産党一党独裁制度である、中国と言う特有の政治体制をとっている国家に
組み込まれてしまうのではないかという、将来的な不安が行動を起こさせていると言う解説
が多いのですが、現実的に中国の急激な経済発展において、経済的には中国依存型に
なっている事が、思想面とは違う方向で親中国派を生んでおり表面上デモに反対している
人々も多いのではないかと思います。
中国政府も20年前との比較においては、民主化方向に少しずつ前進しているという考え
もあり、香港においては少なくとも言論・報道の自由が現状から後退することなく、生後65
年しか経っていない現体制の中国も含めて少しずつでも民主化と言われる自由な方向に向
かっていく事を願うばかりです。
2014年11月10日
車田 修
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・