中国レポート
インドネシア訪問
やっと猛暑が遠のきつつある日本に対して、中国広東省は朝夕もまだ30℃状態が続い
ていますが、今月末から11月末頃まで年間通じてもっとも過ごしやすい季節となります。
中国の銀行の金融引き締めによる設備投資の落ち込みは極端で、精一機械においても
今年前半までの、工場内通路の確保も難しいくらい製造と出荷に追われていた事が嘘の
ように、今は工場内が整然として残業も無い状態が今年後半になって始まっています。
国内向け設備の引き合いは未だあるようですが、なかなか大型の受注案件が成立しない
ようで、日本向けや海外向けの案件が中心となって工場が動いているのが現状です。
前回の金融引き締め時も約1年間受注が極端に減り、緩和策に切り替えてからも徐々
に戻ってくるのに半年以上かかっていますので、今回も来年前半までは回復が難しいのでは
ないかと危惧されます。
先日20年位ぶりにインドネシアを訪問して、オートバイと車の多さの予想は想像した通り
で、無秩序としか思えない運転マナーは20年前と変わっていませんが、順調な経済成長の
一端を見てきました。
インフラ整備が遅れていると言われていますが、この国は計画性と言うものが無いかと思わ
せるような街中での電柱や電線の状態をみて、中国やベトナムとは異なった発展状況なの
だと感じました。
インドネシア共和国は人口が増加傾向の国で、豊富な労働力に支えられ経済面でも発
展を続けています。2013年の統計で人口は2億4882万人、国の面積は約191万平方
km(日本の5.1倍)を持つ大国ですが、特に東西の距離は約5510km、南北は2000
kmにも及ぶジャワ島を中心とした多くの島から成り立つ多民族国家で、世界では最大の民
主国家としての大統領選挙が、今年7月9日に国民の有権者1億94万人の直接投票の形
で行われ、8月22日に投票結果の有効性が認められ、ジョコ・ウィドド氏が次期大統領として、
10月2日に就任する事が決まっています。
インドネシアの経済成長率は1997年のアジア通貨危機時に一時的に落ち込んだものの、
その後急激に回復しその後も5~6%前後を維持していますが、中国やベトナムの急激な成
長率とは異なった安定した成長を続けており、人口も同じような比率で増え続けている世界
でも有数な経済安定成長を保っている国で、今後はインフラ整備を充実させる方向性が出
されており、少なくとも今後10年間は同等な成長を持続するだろうと言われています。
日本企業においても、過去の政治的な不安定さが解消されてきた関係と安定成長の持続
性、低コストで豊富な労働力の魅力から中国や韓国への直接投資が縮小されつつある事も
あり、2010年以降急激に投資流入が増えてきており、インドネシアの貿易赤字を上回るほ
どの直接投資ブームとなっているようです。
歴史的には16世紀からオランダの植民地(18世紀まではオランダ東インド会社による統治)
として、20世紀の第二次世界大戦で日本軍が侵攻するまで長期にわたり押さえつけられ、
1945年8月19日に独立する事を日本政府が認めていたのですが、日本の敗戦(終戦)
8月15日になってしまった関係上、再度オランダの介入が始まり、以降4年間の独立戦争を
経て1949年に正式にオランダからの独立を果たしました。
スカルノ大統領から始まった独立国家は、長い内紛を経て今の政権に引き継がれているので
すが、スカルノの中国共産党との繋がりを否定した1967年に起こった国軍によるクーデター後、
合法的に第2代大統領に就任したスハルトは中国との国交を完全に断絶し、中国との国交
が回復したのは23年後の1990年のことでした。
最近では中国の急速な経済発展の影響もあり、経済的な面で中国との関係は切っても切
れない状況になっている事は明らかなのですが、このような歴史的な背景から、アセアン諸国の
中でも最も親日的と言われるインドネシアに対して、近年急速に日本からの直接投資が増えて
きている事は、発展途上国としての多くの課題は有るにしろ、インドネシアの人口と将来的な消
費力を見据えた、自然な流れになっているのではないかと思います。
当然の事ながら、賃金の急速な上昇が始まっており、貧困層と言われる比率も急速に減少
傾向にあり、約2億人と言われる中間層の購買力は今後内需型と言われるインドネシアの経
済を安定して成長させる原動力となると言われています。中国やベトナムのような一部の富裕
層がその国の経済を引っ張るのとは違った方法で成長する姿は、私たち日本人から見ても違
和感が無く、多民族国家である事と多宗教国家である事が、政治的な内紛の火種にならな
いような安定した状態が長く続くことを願っています。
2014年09月10日
車田 修
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